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2006年03月10日

■後集31項

嗜寂者、観白雲幽石而通玄、趨栄者、見清歌妙舞而忘倦。
唯自得之士、無喧寂、無栄枯、無往非自適之天。

寂(じゃく)を嗜(たしな)む者(もの)は、白雲幽石(はくゆうせき)を観(み)て玄(げん)に通(つう)じ、栄(えい)に趨(はし)る者(もの)は、清歌妙舞(せいかみょうぶ)を見(み)て倦(う)むを忘(わす)る。
唯(ただ)、自得(じとく)の士(し)は、喧寂(けんじゃく)無(な)く、栄枯(えいこ)無(な)く、往(ゆ)くとして自適(じてき)の天(てん)に非(あら)ざるは無(な)し。

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■後集32項

孤雲出岫、去留一無所係。
朗鏡懸空、静躁両不相干。

孤雲(こうん)、岫(しゅう)を出(い)ずるも、去留(きょりゅう)は一(いつ)も係(かかわ)る所(ところ)なし。
朗鏡(ろうきょう)空(くう)に懸(かか)るも、静躁(せいそう)は両(ふた)つながら相(あい)干(かわか)さず。

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■後集33項

悠長之趣、不得於醲釅、而得於啜菽飲水。
惆悵之懐、不生於枯寂、而生於品竹調絲。
固知濃所味常短、淡中趣独真也。

悠長(ゆうちょう)の趣(おもむき)は、醲釅(のうげん)に得(え)ずして、菽(しゅく)の啜(すす)り水(みず)を飲(の)むに得(う)。
惆悵(ちゅうちょう)の懐(おもい)は、枯寂(こじゃく)に生(しょう)ぜずして、竹(たけ)を品(しな)し絲(いと)を調(しら)ぶるに生(しょう)ず。
固(まこと)に知(し)る、濃所(のうしょ)の味(あじわい)は常(つね)に短(みじか)く、淡中(たんちゅう)の趣(おもむき)は独(ひと)り真(まこと)なり。

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■後集34項

禅宗曰、饑来喫飯倦来眠。
詩旨曰、眼前景致口頭語。
蓋極高寓於極平、至難出於至易、有意者反遠、無心者自近也。

禅宗(ぜんしゅう)に曰(いわ)く、「饑(う)え来(き)たれば飯(はん)を喫(きっ)し、倦(う)み来(き)たれば眠(ねむ)る」。
詩(し)の旨(し)に曰(いわ)く、「眼前(がんぜん)の景致(けいち)、口頭(こうとう)の語(ご)」。
蓋(けだ)し、極高(きょくこう)は極平(きょくへい)に寓(ぐう)し、至難(しなん)は至易(しい)に出(い)で、有意(うい)の者(もの)は反(かえ)って遠(とお)く、無心(むしん)の者(もの)は自(おのず)から近(ちか)きなり。

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■後集35項

水流而境無声、得処喧見寂之趣。
山高而雲不碍、悟出有入無之機。

水(みず)流(なが)れて境(きょう)に声無(な)く、喧(けん)に処(しょ)して寂(じゃく)を見(み)るの趣(おもむき)を得(え)ん。
山(やま)高(たか)くして雲(くも)碍(さまた)げず、有(う)を出(い)で無(む)に入(い)るの機(き)を悟(さと)らん。

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■後集36項

山林是勝地、一営恋便成市朝。
書画是雅事、一貪癡便成商賈。
蓋心無染着、欲界是仙都。
心有係恋、楽境成苦海矣。

山林(さんりん)は是(こ)れ勝地(しょうち)、一(ひと)たび営恋(えいれん)すれば、便(すなわ)と市朝(しちょう)と成(な)る。
書画(しょが)は是(こ)れ雅事(がじ)、一(ひと)たび貪癡(どんち)すれば、便(すなわ)ち商賈(しょうこ)と成る。
蓋(けだ)し、心(こころ)に染著(せんちゃく)無(な)くば、欲界(よくかい)も是(こ)れ仙都(せんと)なり。
心(こころ)に係恋(けいれん)有(あら)ば、楽境(らっきょう)も苦海(くかい)と成(な)る。

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■後集37項

時当喧雑、則平日所記憶者、皆漫然忘去。
境在清寧、則夙昔所遺忘者、又恍爾現前。
可見静躁稍分、昏明頓異也。

時(とき)、喧雑(けんざつ)に当(あた)らば、則(すなわ)ち平日(へいじつ)記憶(きおく)する所(ところ)の者も、皆(みな)漫然(まんぜん)として忘(わす)れ去(さ)る。
境(きょう)、清寧(せいねい)に在(あ)らば、則(すなわ)ち夙昔(しゅくせき)遺忘(いぼう)する所(ところ)の者も、又(また)恍爾(こうじ)として前(まえ)に現(あら)わる。
見(み)るべし、静躁(せいそう)稍(やや)分(わか)るれば、昏明(こんめい)頓(とみ)に異(こと)なるを。

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■後集38項

蘆花被下、臥雪眠雲、保全得一窩夜気。
竹葉杯中、吟風弄月、躱離了万丈紅塵。

盧花(ろか)被(ひ)の下(もと)、雪(ゆき)に臥(ふ)し雲(くも)に眠(ねむ)れば、一窩(いっか)の夜気(やき)を保全(ほぜん)し得(う)。
竹葉(ちくよう)杯(はい)の中(なか)、風(かぜ)に吟(ぎん)じ月(つき)を弄(もてあそ)べば、万丈(ばんじょう)の紅塵(こうじん)を躱離(たり)し了(おわ)る。

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■後集39項

袞冕行中、着一藜杖的山人、便増一段高風。
漁樵路上、著一袞衣的朝士、転添許多俗気。
固知濃不勝淡、俗不如雅也。

袞冕(こんべん)の行中(こうちゅう)、一(いつ)の藜杖(れいじょう)の山人(さんじん)を着(つ)くれば、便(すなわ)ち一段(いちだん)の高風(こうふう)を増(ま)す。
漁樵(ぎょしょう)の路上(ろじょう)、一(いつ)の袞衣(こんい)の朝士(ちょうし)を著(つ)くれば、転(うた)た許多(きょた)の俗気(ぞくき)を添(そ)う。
固(まこと)に知(し)る、濃(のう)は淡(たん)に勝(まさ)らず、俗(ぞく)は雅(が)に如(し)かざるを。

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■後集40項

出世之道、即在渉世中、不必絶人以逃世。
了心之功、即在尽心内、不必絶欲以灰心。

出世(しゅっせ)の道(みち)は、即(すなわ)ち世(よ)を渉(わた)る中(なか)に在(あ)り、必(かなら)ずしも人(ひと)を絶(た)ちて以(もっ)て世(よ)を逃(のが)れず。
了心(りょうしん)の功(こう)は、即(すなわ)ち心(こころ)を尽(つく)す内(うち)に在(あ)り、必(かなら)ずしも欲(ひと)を絶(た)ち以(もっ)心(こころ)を灰(はい)にせず。

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■後集41項

此身常放在僚茵栄辱得失、誰能差遺我。
此心常安在静中、是非利害、誰能瞞昧我。

此(こ)の身(み)常(つね)に僚茵覆んしょ)に放在(ほか)せば、栄辱得失(えいじょくとくしつ)は、誰(だれ)か能(よ)く我(われ)を差遺(さけん)せん。
此(こ)の心(こころ)常(つね)に静中(せいちゅう)に安在(おか)せば、是非利害(ぜひりがい)は、誰(だれ)か能(よ)く我(われ)を瞞昧(まんまい)せん。

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■後集42項

竹籬下、忽聞犬吠鶏鳴、恍似雲中世界。
芸窓中、雅聴蝉吟鴉噪、方知静裡乾坤。

竹籬(ちきり)の下(もと)、忽(たちま)ち犬(いぬ)吠(ほ)え鶏(とり)鳴(な)くを聞(き)けば、恍(こう)として雲中(うんちゅう)の世界(せかい)に似(に)たり。
芸窓(げいそう)の内(うち)、雅(まさ)に蝉(せみ)吟(な)き鴉(からす)噪(さわ)ぐを聴(き)けば、方(はじ)めて静裡(せいり)の乾坤(けんこん)を知(し)る。

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■後集43項

我不希栄、何憂乎利禄之香餌。
我不競進、何畏乎仕官之危機。

我(われ)栄(えい)を希(ねが)わずんば、何(なん)ぞ利祿(りろく)の香餌(こうじ)を憂(うれ)えん。
我(われ)進(すす)むを競(きそ)わずんば、何(なん)ぞ仕官(しかん)の危機(きき)を畏(おそ)れん。

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■後集44項

徜徉於山林泉石之痢⊆塵心漸息。
夷猶於詩書図画之内、而俗気潜消。
故、君子雖不玩物喪志、亦常借境調心。

山林泉石(さんりんせんせき)の痢覆ん)に徜徉(しょうよう)せば、而(すなわ)ち塵心(じんしん)漸(ようや)く息(や)む。
詩書図画(ししょづが)の内(うち)に夷猶(いゆう)せば、而(すなわ)ち俗気(ぞくき)潜(ひそ)かに消(き)ゆ。
故(ゆえ)に君子(くんし)は、物(もの)を玩(もてあそ)びて志(こころざし)を喪(うしな)わずと雖(いえど)も、亦(また)常(つね)に境(きょう)を借(か)りて心(こころ)を調(ととの)う。

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■後集45項

春日気象繁華、令人心神駘蕩。
不若秋日雲白風清、蘭芳桂馥、水天一色、上下空明、使人神骨倶清也。

春日(しゅんじつ)の気象(きしょう)は繁華(はんか)にして、人(ひと)の心神(しんしん)をして駘蕩(たいとう)ならしむ。
秋日(しゅうじつ)の雲白(くもしろ)く、風(かぜ)清(きよ)く、蘭(らん)芳(かんば)しく桂(かつら)馥(にお)い、水天一色(すいてんいっしょく)に、上下空明(じょうげくうめい)にして、人(ひと)の神骨(しんこつ)倶(とも)に清(きよ)らかならしむに若(し)かずなり。

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■後集46項

一字不識、而有詩意者、得詩家真趣。
一偈不参、而有禅味者、悟禅教玄機。

一字識らずして、而も詩意あるは、詩家の真趣を得。
一偈参せずして、而も禅味あるは、禅教の玄機を悟る。

一字(いちじ)も知らざる、而(しか)も詩意(しい)有(あ)る者(もの)は、詩家(しか)の真趣を得る。
一偈(いちげ)も参(さんぜ)に、而(しか)も禅味(ぜんみ)有(あ)る者は、禅教(ぜんきょう)の玄機(げんき)を悟(さと)る。

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■後集47項

機動的、弓影疑為蛇蝎、寝石視為伏虎。
此中渾是殺気。
念息的、石虎可作海鷗、蛙声可当鼓吹、触処倶見真機。

機(き)動(うご)くは、弓影(きゅうえい)も疑(うたが)いて蛇蝎(だかつ)と為(な)し、寝石(しんせき)も視(み)て伏虎(ふっこ)と為(な)す。
此(この)中(うち)渾(すべ)て是(こ)れ殺気(さっき)なり。
念(ねん)息(や)むは、石虎(せっこ)も海鷗(かいおう)と作(な)し、蛙声(あせい)も鼓吹(こすい)に当(あ)つべし。
触(ふ)るる処(ところ)倶(とも)に真機(しんき)を見(み)る。

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■後集48項

身如不繋之舟、一任流行坎止。
心似既灰之木、何妨刀割香塗。

身(み)は繋(つな)がざるの舟(ふね)の如(ごと)く、一(いつ)に流行坎止(りゅうこうかんし)するに任(まか)す。
心(こころ)は既(すで)に灰(はい)となれる木(き)に似(に)て、何(なん)ぞ刀割香塗(とうかつこうと)を妨(さまた)げん。

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■後集49項

人情聴鴬啼則喜、聞蛙鳴則厭。
見花則思培之、遇草則欲去之。
倶是以形気用事。
若以性天視之、何者非自鳴其天機、非自暢其生意也。

人(ひと)の情(じょう)は、鴬(うぐいす)の啼(な)くを聴いて則(すなわ)ち喜(よろこ)び、蛙(かわず)の鳴(な)くを聞(き)いては則(すなわ)ち厭(いとう)。
花(はな)を見ては則(すなわ)ち之(こ)れを培(つちか)わんことを思い、草(くさ)に遇(あ)いては則(すなわ)ち之(これ)を去(さ)らんと欲(ほっ)す。
倶(とも)に是(これ)形気(けいき)を以(もっ)て事(こと)を用(もちう)るのみ。
若(も)し性天(せいてん)を以(もっ)て之(これ)を視(み)れば、何者(なにもの)か、自(おのず)から其(そ)の天機(てんき)を鳴(な)らすに非(あら)ず、自(おのず)から其(そ)の生意(せいき)を暢(の)ぶるに非(あら)ざらんや。

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■後集50項

髪落歯疎、任幻形之彫謝、鳥吟花咲、識自性之真如。

髪(かみ)落(お)ち歯(は)疎(まば)らにして、幻形(げんけい)の彫識(ちょうしゃ)するに任(まか)せ、鳥(とり)吟(ぎん)じて花(はな)咲(さ)き、自性(じしょう)をして真如(しんにょ)を識(し)る。

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■後集51項

欲其中者、波沸寒潭、山林不見其寂。
虚其中者、凉生酷暑、朝市不知其喧。

其(そ)の中(なか)を欲(よく)にする者(もの)は、波(なみ)、寒潭(かんたん)に沸(わ)き、山林(さんりん)もその寂(せき)を見(み)ず。
其(そ)の中(なか)を虚(きょ)にする者は、凉(りょう)、酷暑(こくしょ)に生(しょう)じ、朝市(ちょうし)も其(そ)の喧(けん)を知(し)らず。

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■後集52項

多蔵者厚亡。
故知富不如貧之無慮。
高歩者疾顛。
故知貴不如賤之常安。

多(おお)く蔵(ぞう)する者(もの)は厚(あつ)く亡(うしな)う。
故(ゆえ)に知(し)る、富(とみ)は貧(まずしき)の慮(おもんぱか)り無(な)きに如(しか)ざる。
高(たか)く歩(あゆ)む者(もの)は、疾(はや)く顛(たよ)る。
故(ゆえ)に知(し)る、貴(き)は賤(いやしき)の常(つね)に安(やす)きに如(し)かざるを。

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■後集53項

読易暁窓、丹砂研松間之露。
譚経午案、宝磬宣竹下之風。

易(えき)を暁窓(ようそう)に読(よ)みて、丹砂(たんさ)を松間(しょうかん)の露(つゆ)に研(と)ぎ、経(きょう)を午案(ごあん)に譚りて、宝磬(ほうけい)を竹下(ちくか)の風(かぜ)に宣(の)ぶ。

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■後集54項

花居盆内、終乏生機、鳥入籠中、便減天趣。
不若山間花鳥、錯雑成文、翺翔自若、自是悠然会心。

花(はな)、盆内(ぼんない)に居(お)れば、終(つい)に生機(せいき)に乏(とぼ)しく、鳥(とり)、籠中(ろうちゅう)に入(い)らば、便(すなわ)ち天趣(てんしゅ)を減(げん)ず。
若(し)かず、山間(さんかん)の花鳥(かちょう)、錯雑(さくざつ)して文(ぶん)を成(な)し、翺翔(こうしょう)することを自若(じじゃく)、自(おの)ずから是(こ)れ悠然(ゆうぜん)として会心(かいしん)する。

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■後集55項

世人只縁認得我字太真。
故多種種嗜好、種種煩悩。
前人云、不複知有我、安知物為貴。
又云、知身不是我、煩悩更何侵。
真破的之言也。

世人(せじん)、只(ただ)我(が)の字(じ)を認(みと)め得(う)ること太(はなは)だ真(しん)なるに縁(よ)る。
故(ゆえ)に種々(しゅしゅ)の嗜好(しこう)、種々(しゅじゅ)の煩悩(ぼんのう)多(おう)し。
前人(ぜんじん)云(い)う、「複(また)我(が)有(あ)るを知(し)らず、安(いずく)んぞ物(もの)の貴(とうと)しと為(な)すを知(し)らん」。
又(また)云(い)う、「身(み)は是(こ)れ我(が)ならずと知らば、煩悩(ぼんのう)更(さら)に何(なん)ぞ侵(おか)さん」と。
真(まこと)に破的(はてき)の言(げん)なり。

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■後集56項

自老視少、可以消奔馳角逐之心。
自瘁視栄、可以絶紛華靡麗之念。

老(ろう)自(よ)り少(しょう)を視(み)れば、以(もっ)て奔馳角逐(ほんちかくろう)の心(こころ)を消(け)すべし。
瘁(すい)自(よ)り栄(えい)を視(み)れば、以(もっ)て紛華靡麗(ふんかびれい)の念(ねん)を絶(た)つべし。

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■後集57項

人情世態、倐忽万端、不宜認得太真。
堯夫云、昔日所云我、而今却是伊。
不知今日我又属後来誰。
人常作是観、便可解却胸中罥矣。

人情世態(にんじょうせたい)、倏忽万端(しゅうこつばんたん)、宜(よろ)しく認(みと)め得(え)て太(はなは)だ真(しん)なるべからず。
堯夫(ぎょうふ)云(い)う、「昔日(せきじつ)我(われ)と云(い)う所(ところ)、而今(じこん)却(かえ)って是(こ)れ伊(かれ)なり。
今日(こんにち)の我(われ)は又(また)後来(こうらい)の誰(たれ)にか属(ぞく)すかを知(し)らず」。
人(ひと)、常(つね)に是(こ)の観(かん)を作(な)さば、便(すなわ)ち胸中(きょうちゅう)の罥(けん)を解却(かいきゃく)すべし。

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■後集58項

熱閙中、着一冷眼、便省許多苦心思。
冷落処、存一熱心、便得許多真趣味。

熱閙(ねつどう)の中(うち)に一(いつ)の冷眼(れいがん)を着(つ)くれば、便(すなわ)ち許多(きょた)の苦(く)の心思(しんし)を省(はぶ)く。
冷落(れいらく)の処(ところ)に一(いつ)の熱心(ねっしん)を存(そん)せば、便(すなわ)ち許多(きょた)の真(しん)の趣味(しゅみ)を得(う)る。

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■後集59項

有一楽境界、就有一不楽的相対待。
有一好光景、就有一不好的相乗除。
只是尋常家飯、素位風光、纔是個安楽的窩巣。

一(いつ)の楽境界(らっきょうかい)有(あれ)ば、就(すなわ)ち一(いつ)の不楽(ふらく)の相対(あいたい)待(たい)する有(あ)り。
一(いつ)の好光景(こうこうけい)有(あれ)ば、就(すなわ)ち一(いつ)の不好(ふこう)の相乗除(あいじょうじょ)する有(あ)り。
只(ただ)是(こ)れ尋常(じんじょう)の家飯(かはん)、素位(そい)の風光(ふうこう)のみ、纔(わず)かに是(こ)れ個(こ)の安楽(あんらく)の窩巣(かそう)なり。

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■後集60項

簾櫳高敞、看青山緑水呑吐雲煙、識乾坤之自在。
竹樹扶疎、任乳燕鳴鳩送迎時序、知物我之両忘。

簾櫳高敞(れんろうこうしょう)、青山緑水(せいざんりょくすい)の雲煙(うんえん)を呑吐(どんと)するを看(み)ては、乾坤(けんこん)の自在(じざい)なるを識(し)る。
竹樹扶疎(ちくじゅふそ)、乳燕鳴鳩(にゅうえんめいきゅう)の時序(じじょ)を送迎(そうげい)するに任(まか)せて、物我(ぶつが)の両(ふた)つながら忘(わす)るるを知(し)る。

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