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2006年03月09日

■前集31項

富貴家宜寛厚、而反忌刻。是富貴而貧賤其行矣。
如何能享。
聡明人宜斂蔵、而反耀。
是聡明而愚(蒙)其病矣。
如何不敗。

富貴(ふき)の家は宜(よろ)しく寛厚(かんこう)なるべくも、反(か)って忌刻(きこく)なり。是れ富貴にして、其の行いを貧賤(ひんせん)にするなり。如何(いかん)ぞ能(よ)く享(う)けん。
聡明な人は宜(よろ)しく斂蔵(れんぞう)すべくして、反って耀(げんよう)す。是れ聡明にして、其の病を愚(蒙)にするなり。如何(いかん)ぞ敗れざらん。

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■前集32項

居卑而後知登高之為危。
処晦而後知向明之太露。
守静而後知好動之過労。
養黙而後知多言之為躁。

卑(ひく)きに居(お)りて而後(しかるのち)高きに登るの危きを知る。
晦(くら)きに処(お)りて而後(しかるのち)明るきに向うの太(はなは)だ露(あらわ)るるを知る。
静(せい)を守りて而後(しかるのち)動を好むの労(ろう)に過ぐるを知る。
黙(もく)を養いて而後(しかるのち)言の多きの躁(そう)たるを知る。

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■前集33項

放得功名富貴之心下、便可脱凡。
放得道徳仁義之心下、纔可入聖。

功名富貴(こうめいふき)の心を放(はなち)得下(えくだ)して、便(すなわ)ち凡を脱すべし。
道徳仁義(どうとくじんぎ)の心を放ち得下(えくだ)して、纔(はじめ)て聖に入るべし。

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■前集34項

利欲未尽害心、意見乃害心之蟊賊。
声色未必障道、聡明乃障道之藩屏。

利欲は未(いま)だ尽(ことごと)くは心を害せず、意見は乃(すなわ)ち心を害するの蟊賊(ぼうぞく)なり。
声色(せいしょく)は未(いま)だ必ずしも道を障(ささ)ず、聡明は乃(すなわ)ち道を障(ささえ)うるの藩屏(はんぺい)なり。

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■前集35項

人情反復、世路崎嶇。行不去処、須知退一歩之法。
行得去処、務加譲三分之功。

人情は反復し、世路(せいろ)は崎嶇(きく)たり。
行(ゆ)き去らざる処(ところ)は、須(すべか)らく一歩を退くの法を知るべし。
行き得去(えざ)る処は、務(つとめ)て三分を譲るの功を加えよ。

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■前集36項

待小人、不難於厳、而難於不悪。
待君子、不難於恭、而難於有礼。

小人(しょうにん)を待つは、厳に難(かた)からずして、悪(にく)まざるに難(がた)し。君子を待つは、恭(きょう)に難(かた)からずして、礼あるに難(がた)し。

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■前集37項

寧守渾噩而黜聡明、留些正気還天地。
寧謝紛華而甘澹泊、遺個清名在乾坤。

寧(むし)ろ渾噩(こんがく)を守りて、聡明を黜(しりぞ)け、些(いささ)かの正気を留めて天地に還(かえ)せ。
寧(むし)ろ紛華(ふんか)を謝して、澹泊(たんぱく)に甘んじ、個の清名(せいめい)をして乾坤(けんこん)に遺(のこ)せ。

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■前集38項

降魔者、先降自心。
心伏則群魔退聴。
馭横者、先馭此気。
気平則外横不侵。

魔(ま)を降(くだ)すには、先(ま)ず自(みずから)の心を降(くだ)す。心伏(しんふく)すれば、則(すな)ち群魔(ぐんま)退(しりぞ)き聴(したが)う。
横(ほしいまま)なるを馭(ぎょ)するには、先ず此(こ)の気を馭(ぎょ)す。気平(きたいら)かなれば、則(すなわ)ち外横(がいこう)も侵(おか)さず。

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■前集39項

教弟子如養閨女。
最要厳出入謹交遊。
若一接近匪人、是清浄田中下一不浄種子。
便終身難植嘉禾。

弟子を教うるは閨女(けいじょ)を養うが如(ごと)し。最も出入(でいり)を厳しくし、交遊を謹(つつし)むを要す。
若(も)し一(ひと)たび匪人(ひじん)に接近せば、是れ清浄(しょうじょう)の田中(でんちゅう)に一(いつ)の不浄(ふじょう)の種子を下すなり。
便(すなわ)ち終身、嘉禾(かか)を植え難(がた)し。

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■前集40項

欲路上事、毋楽其便而姑為染指。
一染指、便深入万仭。
理路上事、毋憚其難而稍為退歩。
一退歩、便遠隔千山。

欲路上(よくろじょう)の事は、其の便(べん)を楽しみて姑(しばら)くも染指(せんし)をなすこと母(なか)れ。一(ひと)たび染指(せんし)せば、便(すなわ)ち深く万仭(ばんじょう)に入らん。
理路上(りろじょう)の事は、其の難(なん)を憚(はばか)りて、稍(わず)かも退歩(たいほ)を為(な)すこと母(なか)れ。一(ひと)たび退歩(たいほ)せば。便(すなわ)ち遠く千山(せんざん)を隔(へだ)てん。

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■前集41項

念頭濃者、自待厚、待人亦厚、処処皆濃。
念頭淡者、自待薄、待人亦薄、事事皆淡。
故君子、居常嗜好、不可太濃艶、亦不宜太枯寂。

念頭濃(ねんとうこまや)かなる者は、自(みず)から待つことに厚く、人を待つこともまた厚く、処々皆濃(しょしょみなこま)やかかなり。
念頭淡(ねんとうあわ)き者は、自(みず)から待つこと薄く、人を待つこともまた薄く、事々皆淡(じじみなあわ)し。
故(ゆえ)に君子は居常(きょじょう)の嗜好(しこう)は、太(はなはだ)しく濃艶(のうえん)なるべからず、亦(また)宜しく太(なはだ)しく枯寂(こせき)なるべからず。

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■前集42項

彼富我仁、彼爵我義。
君子固不為君相所牢籠。
人定勝天、志一動気。
君子亦不受造物之陶鋳。

彼は富(ふ)なれば我は仁(じん)、彼は爵(しゃく)なれば我は義(ぎ)。君子固(くんしもと)より君相(くんそう)に牢籠(ろうろう)せられず。
人定(ひとさだ)まれば天に勝ち、志一(こころざしいつ)なれば気を動かす。君子亦(くんしまた)造物(ぞうぶつ)の陶鋳(とうちゅう)を受けず。

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■前集43項

風恬浪静中、見人生之真境、味淡声希処、識心体之本然。

風恬(かぜやす)らかに浪静(なみしず)かなる中(うち)、人生の真境(しんきょう)を見、味淡(あじあわ)く声希(こえしず)かなる処(ところ)に、心体(しんたい)の本然(ほんぜん)を識(し)る。

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■前集44項

立身不高一歩立、如塵裡振衣、泥中濯足、如何超達。
処世不退一歩処、如飛蛾投燭、羝羊触藩、如何安楽。

身を立つるに一歩を高くして立たずんば、塵裡(じんり)に衣を振(ふる)い、泥中(でいちゅう)に足を濯(あら)うが如(ごと)し。如何(いかん)ぞ超達(ちょうたつ)せん。世に処(お)るに、一歩を退(しりぞ)いて処(お)らずんば、飛蛾(ひが)の燭(しょく)に投じ、羝羊(ていよう)の藩(まがき)に触るるが如(ごと)し。如何(いかん)ぞ安楽ならん。

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■前集45項

学者、要収拾精神、併帰一路。
如修徳而留意於事功名誉、必無実詣。
読書而寄興於吟咏風雅、定不深心。

学ぶ者、精神を収拾して、一路に併帰(へいき)するを要す。
如(も)し徳(とく)を修め、意を事功名誉(じこうめいよ)に留(とど)めれば、必ず実詣(じっけい)無し。
書を読みて、而(しか)も、興(きゅう)を吟咏風雅(ぎんえいふうが)に寄(よ)すれば、定めて深心(しんしん)ならず。

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■前集46項

人人有個大慈悲、維摩屠劊無二心也。
処処有種真趣味、金屋茅簷非両地也。
只是欲蔽情封、当面錯過、使咫尺千里矣。

人々、個の大慈悲あり、維摩(ゆいま)・屠劊(とかい)の二心(ふたごころ)無きなり。
処々、種の真趣味あり。金屋(かなや)・茅簷(ぼうえん)も両地にあらざるなり。
只だ是(こ)れ欲蔽(よくおお)く情を封(ふう)じ、当面に錯過(さっか)せば、咫尺(しせき)を使(し)て千里(せんり)ならしむ。

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■前集47項

進徳修道、要個木石的念頭。
若一有欣羨、便趨欲境。
済世経邦、要段雲水的趣味。
若一有貧着、便堕危機。

徳に進み、道を修むるには、個の木石念頭を要す。
若し一たび欣羨(きんせん)あれば、すなわち欲境に趨(おもむ)く。 
世を済い邦(くに)を経(おさめ)むるには、段の雲水の趣味を要す。
若し一たび貧着(ひんちゃく)あれば、便(すなわ)ち危機に墮(おち)ん。

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■前集48項

吉人無論作用安詳、即夢寐神魂、無非和気。
凶人無論行事狼戻、即声音咲語、渾是殺機。

吉人(きつじん)は作用の安詳(あんしょう)をなる論ずるまでもなく、即(すなわ)ち夢寐(むび)の神魂(しんこん)も、和気(わきに)に非(あら)ざるは無し。
凶人(きゅううじん)は行事の狼戻(ろうれい)なるを論ずるまでもなく、即(すなわ)ち声音(せいいん)の咲語(しょうご)も、渾(すべ)て是(こ)れ殺機なり。

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■前集49項

肝受病、則目不能視、腎受病、則耳不能聴。
病受於人所不見、必発於人所共見。
故君子、欲無得罪於昭昭、先無得罪於冥冥。

肝、病を受くれば、即ち目は視ること能(あた)わず、腎、病を受くれば、耳は聴くこと能(あた)わず。
病いは人の見ざるところにて受けて、必ず人の共に見るところに発す。
故に君子は罪を昭々(しょしょう)に得ることなきを欲すれば、まず罪を冥々(めいめい)に得ることなかれ。

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■前集50項

福莫福於少事、過莫過於多心。
唯苦事者、方知少事之為福、
唯平心者、始知多心之為過。

福(さいわい)は事少なきより福(ふく)なるはなく、禍(わざわい)は心多きより禍(か)なるはなし。
唯(た)だ事に苦しむ者は、方(はじ)めて事少なきの福たるを知る。
唯(た)だ心を平かにする者は、始めて心多きの禍(わざわい)たるを知る。

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■前集51項

処治世宜方、処乱世宜円。処叔季之世、当方円並用。
待善人宜寛、待悪人宜厳。待庸衆之人、当寛厳互在。

治世に処しては宜(よろし)く方なるべく、乱世に処しては宜(よろし)く円なるべく、叔季(しゅくき)の世に処しては、当(まさ)に方円ならびに用(もち)うべし。
善人を待つには宜(よろし)く寛なるべく、悪人を待つには宜(よろし)く厳なるべく、庸衆(ようしゅう)の人を待つには、当(まさ)に寛厳(かんげん)互いに在すべし。

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■前集52項

我有功於人不可念、而過則不可不念。
人有恩於我不可忘、而怨則不可不忘。

我(われ)、人に功(こう)あるも念(おも)うべからず。而(しか)るに過ちは則(すなわ)ち念(おも)わざるべからず。
人、我に恩あらば忘れるべからず、而(しか)るに、怨みは則(すなわ)ち忘れざるべからず。

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■前集53項

施恩者、内不見己、外不見人、即斗粟可当万鐘之恵。
利物者、計己之施、責人之報、雖百鎰難成一文之功。

恩を施す者は、内に己を見ず、外に人を見ざれば、即(たと)え斗粟(とぞく)も万鐘(ばんしょう)の恵みに当たるべし。
物を利する者は、己の施しを計り、人の報(むく)いを責(もと)むれば、百鎰(ひゃくいつ)と雖(いえど)も一文の功を成し難(がた)し。

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■前集54項

人之際遇、有斉有不斉、而能使己独斉乎。
己之情理、有順有不順、而能使人皆順乎。
以此相観対治、亦是一方便法門。

人の際遇(さいぐう)は、斉(さい)なる有り、斉ならざる有り、而(しか)してよく己れをして独(ひと)り斉(さい)ならしめんや。
己れの情理は、順(じゅん)なる有り、順ならざるあり、而してよく人をしてみな順ならしめんや。
此れを以って相観し対治すれば、またこれ一の方便の法門なり。

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■前集55項

心地乾浄、方可読書学古。
不然見一善行竊以済私、聞一善言仮以覆短。
是又藉寇兵、而齎盗粮矣。

心地、乾浄(けんじょう)にして、方(はじ)めて書を読み、古(いにしえ)を学ぶべし。
然(しか)らざれば、一(いつ)の善行を見ては、竊(ぬす)みて以って私を済(すく)い、一の善言を聞いては、仮りて以って短を覆(おお)う。
これまた寇(こう)に兵を藉(か)し、盗(とう)に粮(ろう)を齎(もたら)すなり。

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■前集56項

奢者富而不足。
何如倹者貧而有余。
能者労而府怨。
何如拙者逸而全真。

奢(おご)る者は富みて而(しか)も足らず。
何ぞ倹(つつましやか)なる者の貧(まず)しきに而(しか)も余りあるを如(し)かん。
能ある者は、労して而(しか)も怨(うら)みに府(あつ)まる。
何ぞ拙(つたな)き者の逸(いつ)にして而(しか)も真を全(まっと)うするに如(しか)ん。

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■前集57項

読書不見聖賢、為鉛槧傭。
居官不愛子民、為衣冠盗。
講学不尚躬行、為口頭禅。
立業不思種徳、為眼前花。

書を読みて聖賢(せいけん)を見ざれば、鉛槧(えんざん)の傭(よう)たり。
官に居(お)りて子民(しみん)を愛せざれば、衣冠(いかん)の盗(とう)たり。
学を講じて、躬行(きゅうこう)を尚(くわ)へざれば、口頭(こうとう)の禅たり。
業を立てて種徳(しゅとく)を思わざれば、眼前の花たり。

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■前集58項

人心有一部真文章、都被残編断簡封錮了。
有一部真鼓吹、都被妖歌艶舞湮没了。
学者須掃除外物、直覔本来、纔有個真受用。

人心に一部の真なる文章あり、都(すべ)て残編断簡(ざんぺんだんかん)に封錮(ふうこ)し了(おわ)る。
一部の真なる鼓吹(こすい)あり、都(すべ)て妖歌艶舞(ようかえんぶ)に湮没(いんぼつ)し了(おわ)る。
学ぶ者は、須(すべから)く外物(げぶつ)を掃除(そうじょ)して、直(ただち)ちに本来を覔(もと)むれば、纔(わず)かに真の受用有るべし。

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■前集59項

苦心中、常得悦心之趣。
得意時、便生失意之悲。

苦心の中(うち)に、常に心を悦(よろ)こばしむる趣(おもむき)を得る。
得意の時に、便(すなわ)ち失意の悲しみを生ず。

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■前集60項

富貴名誉、自道徳来者、如山林中花、自是舒徐繁衍。
自功業来者、如盆檻中花、便有遷徙廃興。
若以権力得者、如瓶鉢中花。
其根不植、其萎可立而待矣。

富貴名誉(ふきめいよ)の、道徳より来たる者は、山林の中の花の如(ごと)く、自(おのず)からこれ舒徐繁衍(じょじょはんえん)す。
功業より来たる者は、盆檻(ぼんかん)の中の花の如(ごと)く、便(すなわ)ち遷徙廃興(せいんしはいこう)あり。
若(も)し、権力をもって得たる者は、瓶鉢(へいかつ)の中の花の如(ごと)し。その根植(ねう)えざれば、其の萎(ちじ)むこと、立ちて待つべし。

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